リウマチ科
関節リウマチとは
その関節の痛みや手のこわばり、
もしかすると関節リウマチの可能性があります
最初の症状として、「朝の手のこわばり」「手関節の腫れ」で気付くことが多いのですが、「膝だけ」「足関節だけ」が腫れることもあります。出産や大きな手術、また転職や引っ越しなど、身体的ストレスや心因的ストレスを契機に発症することがあります。
高齢者発症の関節リウマチもあるので、手足の関節の痛みや腫れが続くときにはご相談ください。
よくある症状
- 朝のこわばり
- 指や手関節が腫れる
- 複数の関節が腫れる
- 対称性に関節が腫れる
- 手に力が入りにくい
- 微熱が続く
関節リウマチの原因
関節リウマチは全人口の0.65%で、男女比は1:3~5と女性に多くみられます。発症年齢は40代から増加していきます。
原因として、自己免疫疾患が考えられ、自分の白血球などから炎症を引き起こす様々な物質が産生された結果、関節の炎症を引き起こすと考えられています。
しかし、現在でもすべての原因が解明されておらず、遺伝的因子や環境因子が発症の引き金となっているとも言われています。出産や大きな手術、また転職や引っ越しなどの身体的ストレスや心因的ストレスを契機に発症することもあります。
関節リウマチの主な症状
初期の症状として、15分以上の朝のこわばり、指や手関節の腫れや関節痛が左右対称的に生じることがあります。2関節以上の関節が腫れや痛みを認めることがありますが、「手関節」「足関節」「膝関節」だけと一つの関節のみに症状が出ることもあります。このように関節リウマチは複数の関節が腫れる場合や、一つの関節だけが腫れる場合など、 患者さん一人ひとり異なっています。
初期症状では関節の腫れと痛みですが、関節の炎症を放置すると、関節の骨破壊が進行して、関節が変形してくることがあります。
関節以外の症状として、間質性肺炎、アミロイドーシスによる下痢などの消化器症状、肘などにできるリウマチ結節、骨粗鬆症などがあります。脊椎では環軸関節亜脱臼という特徴的な変化が頸椎に発症することもあります。
当院で行う関節リウマチの検査
関節リウマチの診断と治療は臨床症状・血液検査・レントゲン検査で行います。
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Step01手と足のレントゲン撮影
関節リウマチのレントゲン画像で初期にみられる「骨びらん」は、手や足に出現します。受診時に手と足のレントゲン撮影を行い、骨変化を確認します。
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Step02血液検査
リウマチ因子(特異度80-90%)と抗CCP抗体(特異度95-98%)を検査します。陽性であれば、関節リウマチと診断されます。
その他に、炎症値(CRP)・肝機能・腎機能も同時に検査します。 -
Step03投薬開始時に胸部レントゲン撮影
関節リウマチの関節外症状である間質性肺炎や、薬剤により肺炎をきたすことがあるので、胸部レントゲンを撮影します。
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Step041ヶ月毎から3ヶ月毎に血液検査
関節リウマチの炎症の推移をみるために、リウマチ因子・MMP-3(軟骨破壊の指標)・白血球を測定します。
副作用が出ていないかを確認するために、肝機能・腎機能の検査を行います。
当院で行う薬物療法について
抗リウマチ剤・消炎鎮痛剤・ステロイド剤の三本柱で行います。
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Step011ヶ月~3ヶ月
関節リウマチの炎症のコントロールに使わる主な抗リウマチ剤は免疫抑制剤、免疫調節剤と言われるリウマトレックス®・アザルフィジンEN®・リマチル®・プログラフ®・ケアラム®です。
特に、リウマトレックス®はキードラックで、リウマチ患者さんの63%が服用しているお薬です。当院でも、リウマトレックス®を第一選択薬にしています。
抗リウマチ薬は服用してすぐに関節の腫れや疼痛が軽減するわけではありません。その間は、一般的な消炎鎮痛剤で痛みを抑えます。また、関節の腫れが強いときはステロイド剤が有効です。
ステロイド剤は国内でも42%の患者さんが服用しており、炎症を短期間で抑えるのに有用です。ステロイド剤の長期服用による副作用として、骨粗鬆症・肥満・耐糖能異常があるので、できる限り短期間の使用を心掛けています。 -
Step023ヶ月~6ヶ月
リウマトレックス®の投薬開始後3ヶ月で効果が乏しければ、他の内服薬剤を追加するか、変更するかを検討する必要があります。
疼痛があれば、引き続き消炎鎮痛剤を使用し、関節の炎症があれば、ステロイド剤を使用します。 -
Step036ヶ月以降
6ヶ月以降もリウマチの炎症が収まらない場合は、生物学的製剤という注射製剤を用いることがあります。関節リウマチは自分の白血球などから炎症を引き起こすサイトカインという物質が出ています。生物学的製剤はこのサイトカインの量を減らすことができます。
生物学的製剤は23%の患者さんに服用されており、効果も非常にありますが、薬剤の価格も高いため、内服で効果が得られない患者さんに限定して使用しています。
抗リウマチ剤の気を付ける副作用
抗リウマチ剤は、効果だけではなく副作用もあるので血液検査、尿検査をみながら、慎重に使用します。注意している副作用を記載しておきます。咳が止まりにくい、吐き気がするなど症状がある場合は、すぐにご連絡ください。
商品名 | 一般名 | 主な副作用 |
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リウマトレックス | メトトレキサート | 間質性肺炎・肝障害・骨髄抑制 |
アザルフィジンEN | サラゾスルファピリジン | 皮疹・胃腸障害・肝障害 |
ブシラミン | リマチル | 皮疹・蛋白尿 |
プログラフ | タクロリムス | 腎障害・耐糖能異常・高血圧 |
ケアラム | イグラチモド | 肝障害・胃腸障害・骨髄抑制・ワーファリン禁忌 |
当院で行う関節リウマチのリハビリ
関節の運動性を改善させ、社会生活が送れるようにするために
関節の腫れや痛みがあるときは、無理に動かす必要はありませんが、まったく関節を動かさないでいると、関節が硬くなって動かなくなってしまいます。
関節を温めて、痛みを抑えながら、ゆっくりと関節の最大伸展、最大屈曲をとる必要があります。この際、力まかせに動かすと関節がつぶれるので、関節面に沿った動きが大切です。
院長からの一言
*早期発見・早期治療が大切です*
関節リウマチで最も気を付けなければならないのは関節の変形です。僕が平成8年に関節リウマチの診療を始めたときには、今のような有効なお薬がなく、関節の変形を食い止める手段はほとんどありませんでした。現在でも変形した関節を元に戻すお薬はありません。
関節リウマチの治療は、いかに早期に関節の腫れをとり、関節の変形を抑えるかがカギとなります。朝の手のこわばりが15分以上、2関節以上の腫脹が1週間、3関節以上の疼痛がある場合は、血液検査・レントゲン検査を受けてください。