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病気解説

腰椎椎間板ヘルニア:解説1 ―飛び出したヘルニアはどうなるの?―

腰椎椎間板ヘルニアは、重いものを持った時や腰をかがめた時に、片足に坐骨神経痛が出る病気です。

発症しやすい姿勢や、飛び出したヘルニアがどうなるかを分かりやすく解説します。

 

【ヘルニアの語源】

ヘルニアの語源はラテン語で、内にある臓器が裂け目を通って外に飛び出してしまうことです。

ヘルニアという名前の病気は椎間板ヘルニアが有名ですが、その他に鼠経ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、脳ヘルニアなどがあります。

椎間板ヘルニアとは椎間板の周囲の袋(線維輪)が破れて、椎間板の袋が盛り盛り上がったり、中身(髄核)が外に飛び出した状態のことです。

 

【椎間板ヘルニアが発症する割合】

人口の約1%が発症し、男女比は男性が女性の約2~3倍と言われています。発症する年代は30代が全体の約33%、40代が34%と言われ、中年に多い病気です。

 

【椎間板ヘルニアが発症しやすい部位】

腰椎は第1腰椎から第5腰椎までの5つからなりますが、発症しやすいのは下の方が圧倒的に多く、第4/5腰椎間が約47%、第5腰椎/第1仙椎間が50%です。

 

【椎間板ヘルニアになりやすい姿勢と、職業】

腰椎椎間板にかかる圧は仰向けに寝ている状態を1とすると、立っているときが4倍、前かがみが6倍、前かがみで物を持つと9倍になります。

椅子に座っているときでも6倍になります。

椎間板ヘルニアの発症に注意する姿勢として、膝を伸ばした状態で腰を曲げる姿勢や、持ち上げるときに腰を捻じる動作も危険です。

リスクが高い職業としては職業ドライバーや金属・機械業労働者があげられます。子供を頻回に持ち上げる動作も危険です。

この他、タバコの喫煙も椎間板ヘルニアの発症リスクです。

 

【痛みが片足に出る理由】

椎間板ヘルニアは膨らんだ椎間板や飛び出した中身が抹消神経の根元(神経根)にあたるため、足の痛みがでます。

神経根がないところで椎間板が膨らんでも、腰痛だけで足の痛みは出ません。

神経根は左右に1本ずつなので、よほど大きな椎間板が真ん中に出ない限り、片足の痛みになります。

椎間板ヘルニアが出やすい場所が、第4/5腰椎間と第5腰椎/第1仙椎間なので、症状の多くは臀部から太もも、脛にかけての痛み、いわゆる坐骨神経痛になります。

 

【飛び出した中身はどうなる?】

平均約4カ月で、約80%の椎間板ヘルニアが縮小もしくは完全消失すると言われています。

椎間板から飛び足した中身も自然に吸収されていきます。このため、椎間板ヘルニアの約8割は手術をしなくても治ります。

 

【手術は必要ですか?】

椎間板ヘルニアで、手術になるのは1割ぐらいですが、手術しないといけない症状が2つあります。

一つは膀胱直腸障害と言われる便や尿がでない麻痺です。巨大ヘルニアが正中に発生したときに馬尾神経(排尿と排便の神経)を圧迫することがあります。

もう一つは下垂足(足首が上がらない状態)です。足首を挙げる神経は代償が効かないので、完全に麻痺が出ると回復は難しいです。このため、手術のタイミングは筋力が低下し始めれば、早急に考える必要があります。

 

【院長からの一言】

椎間板ヘルニアの8割は手術をしないで改善します。急性期の痛みのコントロールや椎間板に圧が掛からない姿勢などの生活指導が重要です。

ただし、麻痺になると回復が難しいので、専門医の視点から通院の度に細かくチェックしていきます。