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病気解説

頚椎症性神経根症:解説1 ―頚を後ろに曲げると痛みが強くなります―

頚椎症性神経根症は40~50代の中高年に多く見られます。主な症状は頚から肩、そして腕の「痛み」と「しびれ」です。肩甲骨の内側や上部にも痛みが出ることがあります。頚を傾げたり、後ろに曲げる動作で痛みやしびれが強くなります。

どうして、頚の姿勢で痛みが強くなるのかわかりやすく説明します。

 

【頚椎症がつく3つの病名】

加齢などにより頚椎の骨や椎間板が変形する病気を「変形性頚椎症」と呼びます。変形性頚椎症は神経障害はなく、頚の痛みが症状です。さらに脊柱管が狭窄し、脊髄が圧迫される病気を「頚椎症性脊髄症」と言います。一方、神経根という脊髄から出る抹消神経の根元が圧迫される病気を「頚椎症性神経根症」と呼びます。

 

 

【頚椎症性神経根症の病態】

脊髄から末梢神経が椎間孔という出口を通って脊柱管の外に出ます。加齢変化により変形した骨や椎間板で椎間孔の狭窄が生じます。頚椎症性神経根症とはこの抹消神経の根元(神経根)が椎間孔で圧迫され、疼痛やしびれが発症します。
椎間孔は頚を前に傾けると広がり、後ろに反らすと狭くなるため、頚の姿勢で症状が変化します。

 【症状】

◎痛み・しびれ

頚の後ろの部分や肩から腕にかけての痛みが生じます。肩甲骨周囲の内側や上部にも疼痛がみられます。頚を傾けたり、後ろに反らしたときや重い荷物を持ったときに、痛みが生じることがあります。また痛みの他に、前腕や手にしびれが出ることがあります。
腕の重みで痛みが強くなることがあり、反対の手で肘を支えたり、肩を上げるような動作をすることがあります。

 ◎筋力低下

神経障害が進行すると肩が上がらなくなったり、肘を曲げれなくなるほど筋力が弱くなることがあります。

【症状が出やすい姿勢】

頚を前に倒す姿勢を前屈と言います。一方で、頚を後ろに反らす姿勢を後屈といいます。
頸椎症性神経根症では頚を後屈すると頸から肩・腕への痛みが出ます。例えば、パソコンの画面を頚を反らせて見る姿勢、洗濯を干すときに上を見る姿勢、薬を飲むときに上を向く姿勢などがあります。 

【治療法】

神経根周囲の炎症が軽減すれば、疼痛やしびれなどの症状も軽減していきます。神経根の炎症を軽減させるために様々な治療を組み合わせます。

◎リハビリ

・頚を後屈すると症状が出るので、頚を後方へ反らさないようにします。低い枕よりやや高めの枕の方が神経孔が広がります。(あまり高くすると気道が狭くなるため注意が必要です。)

・頸椎牽引は神経孔が広がるようにやや前方に牽引すると効果があります。(当院の頚椎牽引は牽引する角度を調節することができます。)

・頭の重さは体重の1/8から1/6ぐらいあるので、頚椎カラーを用いて、頸椎への負担を軽減する装具療法も有効です。

 

◎お薬

・非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs):筋肉などの痛み止めに使用します。

・神経障害性疼痛治療薬:しびれを伴う痛みや発作的に生じる鋭い痛みに使用します。

・筋緊張弛緩剤:筋肉の緊張をやわらげます。

・ビタミンB12:傷んだ神経の回復に使用します。

 

◎神経ブロック

痛みが強いときは頸部への神経ブロックが効果的です。

 

【手術は必要ですか?】

手術をしないといけない症状が2つあります。一つは保存的加療で効果が得られない強い痛みです。もう一つは筋力低下です。肩が上がりにくくなったり、肘を曲げて物を持ちづらくなれば、麻痺が出ています。筋力が低下し始めれば手術を考える必要があります。

 

【院長からの一言】

頚椎症神経根症の改善のためには、生活の中での姿勢や頚の動かし方について気を付けていくことが必要です。